老人ホーム・サ高住・ナーシングホーム、何が違う?後悔しない介護施設の選び方
- 11 分前
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「そろそろ退院なので、次の行き先を決めておいてください」——病院でそう言われて、はじめて施設探しに直面する方は少なくありません。
いざ調べ始めると、「老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「ナーシングホーム」……似たような言葉がずらりと出てきて、何がどう違うのか分からなくなってしまう。パンフレットを何枚も並べながら、「うちの親には、どこが合うんだろう」と途方に暮れてしまう。そんな経験はないでしょうか。
この記事では、まぎらわしい高齢者向けの住まいを「医療の手厚さ」「費用」「入居のしやすさ」という3つのものさしで整理し、後悔しない介護施設の選び方として「わが家の場合はどこから考えればいいか」が見えてくるところまでご案内します。専門用語はできるだけかみくだいて説明しますので、施設選びの第一歩として気軽に読み進めてください。
💡 まず結論から
迷ったときは「今、どのくらい介護・医療の手が必要か」から考えるのが近道です。元気めなら住まい寄り(サ高住)、しっかり介護が必要なら介護施設寄り(老人ホーム・特養)、医療的なケアが常に必要なら看護体制が手厚い住まい(「ナーシングホーム」と名乗る施設など)、と大きく方向づけできます。

似ているようで役割が違う「高齢者の住まい」
高齢者向けの住まいは、大きく分けると「暮らしの場(住まい)」に近いものと、「介護・医療を受ける場(施設)」に近いものがあります。名前が似ていても、この位置づけの違いが、費用や入居条件、受けられるケアのすべてに関わってきます。まずは代表的な選択肢を一つずつ見ていきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サ高住は、高齢者向けに配慮された賃貸住宅で、介護保険法上の「施設サービス」ではなく、住宅として登録される制度です。バリアフリー構造に加えて、登録基準で義務づけられた基本サービスは安否確認(状況把握)と生活相談の2つ。施設職員が24時間介護してくれる住まいではなく、介護が必要になったら外部の介護サービスを組み合わせて利用するのが基本の形です。
なお、サ高住は「住宅」として登録されますが、食事の提供や介護などを行う場合は老人福祉法上の有料老人ホームにも該当します(厚労省の推計では、サ高住の多くが有料老人ホームにも当てはまるとされています)。「サ高住だから有料老人ホームの規制は関係ない」というわけではない点は覚えておくとよいでしょう。入居できるのは、原則として60歳以上の方、または要介護・要支援の認定を受けた60歳未満の方です。
自宅に近い自由な暮らしを続けながら、いざというときの見守りがほしい——そんな、比較的お元気な方や介護度が軽めの方に向いています。なお、より手厚い介護に対応する「介護型」のサ高住(特定施設入居者生活介護の指定を受けたタイプ)もあり、施設によって中身の幅が広い点は覚えておくとよいでしょう。
有料老人ホーム(介護付き・住宅型)
有料老人ホームは、株式会社などの民間事業者が運営するものが中心ですが、社会福祉法人などが運営するものもあります。大きく「介護付き」と「住宅型」に分かれ、介護付きは施設のスタッフが24時間体制で介護を提供するタイプ。住宅型は生活支援が中心で、介護が必要になったら外部サービスを利用する点でサ高住に近い性格を持ちます。
要介護度が高い方や認知症の方も受け入れる施設が多く、食事・入浴・排せつの介助から健康管理まで幅広く対応します。施設ごとに「リハビリに力を入れる」「看護師が常駐する」などの特色があるため、比較のしがいがある選択肢です。
特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)
特養は地方公共団体または社会福祉法人が、老健は地方公共団体・医療法人・社会福祉法人などが運営します。いずれも株式会社などの営利法人は参入できず、公的な性格が強い施設です。特養は費用が比較的抑えられる一方、要介護3以上が入居の対象で、待機が生じることもあります(やむを得ない事情がある場合、要介護1・2でも特例的に入居が認められることがあります)。多くは65歳以上の方ですが、40〜64歳でも特定疾病で要介護3以上と認定されれば対象になります。長く暮らす「終の棲家」として選ばれることが多い施設です。
一方の老健は、在宅復帰を目指してリハビリを行う「中間施設」という位置づけ。常勤の医師が配置されているのが特徴です。看護職員は日中配置されますが、夜間は施設によって看護職員の配置か、オンコール(電話待機)対応かが分かれるため、医療依存度が高い場合は個別に確認が必要です。原則としておおむね3か月ごとに在宅復帰の可否が判定される点も、終身利用を前提とする特養との大きな違いです。費用を抑えつつ医療とリハビリを受けたい場面で候補になります。
ナーシングホーム
最近よく耳にするようになった「ナーシングホーム」ですが、実は日本の法律上に明確な定義はありません。有料老人ホームは法令上「介護付き・住宅型・健康型」に分類されますが、「ナーシングホーム」はこの分類に含まれる正式な種別ではなく、医療体制の手厚さを示すために施設が名乗っている呼称です。実際には住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅として登録され、外部の訪問看護・訪問診療を組み合わせて医療対応の手厚さを打ち出しているケースが多く見られます。
共通する特徴は、看護師が長時間(施設によっては24時間)常駐し、医療的なケアや看取りにも対応できること。「今の施設では医療対応が難しいと言われた」「病状が変わっても住み替えずに過ごしたい」といったニーズに応える受け皿として、近年注目が高まっています。定義があいまいな呼び名だからこそ、名前だけで判断せず、中身(看護体制・対応できる医療行為)を必ず確認することが大切です。

介護施設の選び方は「3つのものさし」で考える
種類が分かったら、次は自分の家族に当てはめて比べていきます。判断の軸はシンプルに3つで十分です。
施設選びの3つのものさし
①医療の手厚さ:看護師の常駐時間、対応できる医療行為、看取りの可否。医療依存度が高いほど、老健や、看護体制の手厚い施設(「ナーシングホーム」と名乗る住宅型有料老人ホーム・サ高住など)が候補に。
②費用:初期費用(前払金)と毎月かかる費用。公的施設(特養・老健)は抑えめ、民間施設は幅が広い。
③入居のしやすさ:入居条件(年齢・要介護度)と、すぐ入れるか待機があるか。サ高住は比較的入りやすく、特養は待機が生じることも。
費用の「目安」を知っておく
費用は施設のグレードや地域、居室のタイプによって大きく変わりますが、公的データによる目安は次のとおりです。サ高住の月額は全国平均でおよそ11万円(家賃・共益費・必須サービス費の合計。食費や光熱水費は別途)。介護付き有料老人ホームは月額20万〜30万円台が中心的な価格帯で、30万円以上の施設も少なくありません。住宅型有料老人ホームは月額10万〜12万円台が多い水準です。初期費用については、サ高住は敷金程度に抑えられるケースが多い一方、有料老人ホームでは前払金(入居一時金)が0円の施設も多く、高額帯では1,000万円を超える例もあります。公的施設の特養・老健は前払金が不要で、月額の負担を抑えやすいのが特徴です。
⚠ 「前払金」を払う前に知っておきたい2つのルール
有料老人ホームなどで入居時にまとめて支払う「前払金」(入居一時金・介護一時金などの名称を問いません)には、老人福祉法で入居者を守るしくみが定められています。
保全措置の義務:事業者が倒産した場合などに備え、前払金を保全する措置が義務づけられています。
いわゆる90日ルール:入居後3か月以内に契約を解除・退去(または死亡)した場合、実際に利用した期間分を除いて前払金を返還する契約を結ぶことになっています。
⚠ ここが大切:金額はあくまで目安
ここで挙げた費用は一般的な目安であり、同じ種類の施設でも金額は大きく異なります。また、上記の月額目安には介護保険の自己負担分・医療費・日用品費などは含まれていないため、実際の支出はさらに上乗せになります。実際の負担額は、必ず気になる施設の資料や見学で個別に確認してください。介護保険の自己負担割合や、食費・居住費の軽減制度は所得等の条件によって変わるため、お住まいの自治体の窓口に相談すると安心です。
「わが家の場合」を考える順番
迷ったら、次の順番で絞り込むと考えやすくなります。まず①医療・介護がどのくらい必要かで大きな方向を決め、次に②毎月いくらまで出せるかで現実的な範囲に絞り、最後に③いつまでに入居が必要かで待機の有無を踏まえて候補を決めていきます。冒頭の「退院までに決めてください」のように時間が限られている場合は、③のスピードが選択を左右することもあります。
後悔しないために、最後にひとつだけ
施設選びで最後にものを言うのは、パンフレットの情報よりも「実際に見て、話して、感じたこと」です。同じ「介護付き有料老人ホーム」でも、スタッフの雰囲気や食事、日中の過ごし方は施設ごとにまったく違います。気になる施設が見つかったら、ぜひ足を運んで、本人と一緒に空気を確かめてみてください。
施設紹介サービス「いい介護」(株式会社鎌倉新書)が、同サービスを利用して施設見学を経験した104名に行ったインターネット調査(2026年6〜7月実施)では、施設を選んだ理由として「立地・アクセスが良かったから」が71.2%(複数回答)と最も多く挙げられました。回答者が限られた同社利用者への調査のため全国の傾向を示すものではありませんが、家族が無理なく通える距離を重視する方が多いことがうかがえます。医療・費用・入居条件に加えて、「会いに行きやすいか」もぜひものさしに加えてみてください。

この記事のまとめ
高齢者の住まいは「住まい寄り(サ高住)」から「医療寄り(ナーシングホーム)」まで段階がある。
サ高住は「住宅」として登録される制度、特養・老健は営利法人が参入できない公的施設、有料老人ホームは民間中心という位置づけの違いがある。
「ナーシングホーム」は法律上の定義がない呼び名。名前でなく看護体制などの中身を確認する。
選ぶときは「①医療の手厚さ→②費用→③入居のしやすさ」の順で絞ると考えやすい。
費用は目安にすぎないので、最終的には見学と個別確認が欠かせない。
「何が違うのか分からない」という不安は、言葉の整理さえできれば、ぐっと小さくなります。この記事が、あなたとご家族にとって納得のいく介護施設の選び方の第一歩になればうれしいです。
📋 参考・参照情報
【厚生労働省・国土交通省】 住宅:サービス付き高齢者向け住宅(高齢者住まい法に基づく登録制度の案内)
【厚生労働省】 介護サービス情報公表システム:サービス付き高齢者向け住宅について
【e-Gov法令検索】 老人福祉法(第15条:特養の設置主体、第29条:有料老人ホーム)
【厚生労働省(WAM NET掲載)】 介護保険最新情報Vol.1141:特養の入所は原則要介護3以上・要介護1・2の特例入所について
【国土交通省】 高齢者向け住宅等(サ高住の月額費用・登録制度に関する資料)
【株式会社鎌倉新書「いい介護」】 第2回 介護施設探しに関する実態調査(2026年)※同社利用の施設見学経験者104名へのアンケート
※掲載情報は執筆時点のものです。制度・数値は改定される場合がありますので、最新情報は各機関の公式サイトをご確認ください。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。制度や費用の目安は今後変わる可能性があります。具体的な費用や入居条件、ご家庭の状況については、各施設の資料・見学や、お住まいの自治体の窓口・専門家にご確認ください。



