ナーシングホームの介護職は何が違う?特養・有料との仕事内容・医療的ケア・給料の違いを解説
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特別養護老人ホームで7年働いてきた介護職のAさん。初めて「ナーシングホーム」の夜勤に入った日、ナーシングホームの介護職ならではの緊張感に気づきます。目の前の入居者は、たんの吸引が頻繁に必要な方でした。看護師とすぐに連携できる体制はあるものの、「今までの施設とは、そばにいる緊張感がまるで違う」——そう感じたそうです。
※このエピソードは、現場でよくある状況をもとに構成した一例です。特定の実在人物の話ではありません。
「ナーシングホームの介護職って、特養や有料老人ホームと何が違うの?」——転職を考えたとき、多くの人がぶつかる疑問です。この記事では、仕事内容・医療的ケアの範囲・未経験でも働けるか・給料・大変なところを、Q&A形式でわかりやすく整理します。

そもそもナーシングホームって、普通の老人ホームと何が違う?
ナーシングホームは、医療的ケアと日常の介護を一体で提供する高齢者向けの施設です。もともとは欧米の呼び方で、日本の法律には「ナーシングホーム」という明確な定義がありません。実際には住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などとして運営され、訪問看護や訪問診療と組み合わせて「医療体制が手厚い」ことを示すために、施設名として使われているケースが一般的です。
最大の特徴は、看護師が24時間常駐している(または訪問看護ステーションと連携して夜間も対応できる)こと。そのため、たんの吸引が頻繁に必要な方、胃ろうや人工呼吸器を使っている方など、一般的な老人ホームでは受け入れが難しい医療依存度の高い方も入居でき、看取りまで対応する施設が多いのが実情です。
ざっくり言うと
特養・有料老人ホーム:日常生活の支援が中心。夜間は看護師がいない施設も多い。
ナーシングホーム:介護に加えて医療的ケアの体制が手厚い。医療依存度の高い方や看取りに対応。
Q1. ナーシングホームの介護職の仕事内容は、特養や有料とどう違う?
食事・入浴・排泄という「三大介助」や、生活援助・見守り・バイタル測定といった基本の仕事は、他の施設と大きく変わりません。違いが出るのは、次の3点です。
ナーシングホームで際立つ3つの違い
医療依存度の高い入居者が多い:たんの吸引や経管栄養など、日常的に医療的ケアが必要な方への対応が増える。
看護師との連携が密:体調の変化や急変の兆候を看護師に的確に伝える「観察力・報告力」が日々問われる。
看取りの機会が多い:最期まで寄り添うケアに関わる場面が、他施設より多くなりやすい。
Q2. 介護職も「たんの吸引」みたいな医療的ケアをやるの?
ここは多くの人が気になるポイントです。結論から言うと、一定の研修を修了して認定を受けた介護職員なら、決められた範囲で実施できます。
たんの吸引や経管栄養は、本来は医師や看護職員だけが行える医療行為です。ただし、介護現場での必要性の高まりを受けて2011年6月に社会福祉士及び介護福祉士法が改正され、2012年4月から施行されたことで、「喀痰吸引等研修」を修了し認定を受けた介護職員であれば、医師の指示と看護職員との連携のもとで実施できるようになりました。
介護職ができる「5つの行為」と、その範囲
法令で定められた行為は、次の5つです。いずれも決められた範囲内に限られます。
口腔内の喀痰吸引(咽頭の手前まで)
鼻腔内の喀痰吸引(咽頭の手前まで)
気管カニューレ内部の喀痰吸引(カニューレ内部に限る)
胃ろう又は腸ろうによる経管栄養
経鼻経管栄養
研修は「第1号・第2号・第3号」の3種類
喀痰吸引等研修は3つに分かれます。第1号・第2号は「対応できる行為の範囲」で、第3号は「特定の利用者を対象にするかどうか」で区別されるのがポイントです。
第1号研修:不特定多数の方が対象/5つの行為すべて。
第2号研修:不特定多数の方が対象/5つのうち必要な行為を選んで実施。
第3号研修:特定の利用者(在宅の重度障害者など)が対象/その方に必要な行為のみ。
⚠ ここが大切:誰でもすぐにできるわけではない
医療的ケアの実施には、研修の修了・認定に加えて、本人(または家族)の同意、医師の指示、事業所が登録事業者であることなど、いくつもの条件がそろっている必要があります。「資格を取ったから明日から自由にできる」ものではない、という点は押さえておきましょう。
介護福祉士は「認定証」ではなく登録証への付記
同じ「認定を受けた介護職員」でも、手続きは資格によって異なります。介護福祉士以外の介護職員は、都道府県知事が交付する「認定特定行為業務従事者認定証」を取得します。一方、介護福祉士は認定証ではなく、介護福祉士登録証に、実地研修を修了した行為が付記される仕組みです(この扱いは2016年4月から)。自分がどちらの手続きになるのか、応募先や研修機関で確認しておくと安心です。
Q3. 未経験でも働ける?どんな人が向いている?
ナーシングホームでも、無資格・未経験から応募できる求人はあります。まずは見守り・生活援助・食事や排泄の介助など、資格がなくてもできる業務からスタートし、働きながら初任者研修や実務者研修、そして喀痰吸引等研修へとステップアップしていくのが一般的な流れです。医療的ケアはあくまで研修を経てから、と考えておくとよいでしょう。
⚠ 無資格でも「認知症介護基礎研修」は必要
「無資格=何の研修もいらない」ではありません。2024年4月から、介護に直接携わる無資格の職員には認知症介護基礎研修(eラーニングで約150分)の受講が義務づけられています。新規採用者には採用後1年間の猶予がありますが、入職後に受講することになると考えておきましょう。
ナーシングホームに向いている人
看護師と連携しながら、医療の知識も学んでいきたい人
入居者の体調の小さな変化に気づける、観察が得意な人
看取りやターミナルケアに、真正面から向き合える人
急変時にも落ち着いて動ける、冷静さのある人
Q4. 給料は特養や有料より高い?
まず前提として、「ナーシングホーム」は法令上の類型ではないため、この区分に絞った公的な給与統計は存在しません。そのうえで、近い施設類型の平均給与額を手がかりにできます。
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」による、介護職員(月給・常勤)の平均給与額(令和6年9月)は次のとおりです。
介護老人福祉施設(特養):361,860円
特定施設入居者生活介護(介護付き有料など):361,000円
介護老人保健施設(老健):352,900円
訪問介護:349,740円
全体:338,200円
注目したいのは、特養と、介護付き有料などの特定施設がほぼ同水準だという点です。つまり「医療的ケアがあるから給料が高い」という前提は、統計上は必ずしも裏づけられません。ナーシングホームの多くは住宅型有料老人ホームやサ高住として運営されますが、これらを単独で集計した公的統計もないため、給与は求人ごとに、基本給・手当・夜勤回数・賞与をトータルで見比べるのが確実です。求人サイトの提示額は地域や夜勤回数で大きく変わる参考値、と捉えておきましょう。
今後の給料は? 2026年6月の「処遇改善」が要チェック
求人票でよく見る「処遇改善手当」の正体が、国の介護職員等処遇改善加算です。2024年6月に3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」へ一本化され、さらに2026年6月に施行された令和8年度介護報酬改定(臨時改定、改定率+2.03%)で、対象が介護職員だけでなく看護師・リハビリ職・ケアマネ・事務職などを含む介護従事者全体へ広がりました。
賃上げは、全介護従事者を対象とした月1.0万円に、生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員への上乗せ0.7万円、定期昇給0.2万円を合わせて、介護職員では最大で月1.9万円(6.3%)とされています。「これから給与が上がるのか」を気にする人にとって、まさに直近の追い風です。応募時には、施設がこの加算をどの区分で取得しているかも確認してみましょう。
参考:介護職と全産業の賃金差
厚生労働省が2026年4月に公表した資料(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)では、介護職員の賞与込み給与が月31.4万円、全産業平均(役職者を除く)が月39.6万円で、差は約8.2万円。前年(8.3万円)からほぼ横ばいで、処遇改善は業界全体の課題であり続けています。上記の令和8年度改定は、この差を縮めるための対応です。
Q5. 大変なところ・注意したい点は?
やりがいが大きい一方で、心にとめておきたい面もあります。看取りに関わる機会が多いぶん、支えてきた入居者を看送ることへの精神的な負担を感じる人は少なくありません。また、介護職と看護師で「どこまでが介護でどこからが医療か」の線引きがあいまいだと、連携がうまくいかず人間関係の悩みにつながることもあります。
こうした負担は一人で抱え込まないことが大切です。同僚や上司に相談できる関係、チームで支え合える職場かどうかを、面接や見学のときに確かめておくと安心です。

この記事のまとめ
ナーシングホームは、医療的ケアと介護を一体で提供する施設。法律上の定義はなく、多くは住宅型有料老人ホームやサ高住として運営されている。
介護職の基本業務は特養・有料と同じだが、医療依存度の高さ・看護師との密な連携・看取りの多さが違う。
たんの吸引などは、研修修了・認定を受けた介護職員が、医師の指示と看護連携のもとで決められた範囲内で実施できる。
未経験からでも始められる(無資格でも認知症介護基礎研修は必要)。給料は施設差が大きく、2026年6月の処遇改善で最大月1.9万円の賃上げが進む。
ナーシングホームの介護職は、「介護の力」に「医療への理解」が加わる、専門性を伸ばしやすい環境です。看護師とともに一人ひとりの最期まで寄り添える——そこに大きなやりがいを感じられる人にとって、次のステップとしてきっと選択肢に入る職場です。
参考・参照情報
厚生労働省「喀痰吸引等制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/tannokyuuin/index.html
厚生労働省「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html
厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」(令和8年度介護報酬改定関連)
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。制度・報酬・施設の体制は今後変わる可能性があります。医療的ケアの実施範囲や勤務条件などの詳細は、応募先の施設やお住まいの自治体の窓口にご確認ください。冒頭のエピソードは、現場でよくある状況をもとに構成した一例で、特定の実在人物の話ではありません。



